Googleがやりたくても出来ないこと 出来ないこともあるのです

◆ あの巨人、ネット界の神様も出来ないこと

ここではGoogleのビジネスモデルではやりたくても出来ないことを説明します


どの分野にも「永遠」はない

どの分野でも「永遠」に続くものはありません。それは人の命だけではなく、企業や商品も同じです。

しかし全盛期にあるサービスをみると「他に勝負できるサービスが出来るだろうか」「もう彼らに勝てる相手はいない」と思いがちです。 ところが絶対の真理として「永遠」がないわけですから、ここでGoogleがどこで限界に達するかを考えてみます。


■ インフラと広告収入

簡単な計算をしてみましょう。仮にGoogleがユーザーから得る収入が一人あたり月額100円とします。年間1200円です。 この数字は決して馬鹿げてはいないと思います。ということはGoogleはユーザーあたりのコストを年間1200円に抑えないと収益は上がらないことになります。

ご存知の通りGoogleは巨大なデータセンターをもっています。そして想像出来ないほどのインターネット回線と優秀な人材を抱えています。これらはすべてコストとなります。

一人あたりの売上が1200円であっても効率がいいので収益を上げることができます。その前提は2つあります。

  • 巨大なパイ(市場)を握る
  • 効率良くインフラを使う
1)についてはスケールメリットですから異論はないでしょう。一方2)ついては少し解説が必要です。


■ 効率のよいインフラの利用

地球は丸いので、半分は昼、半分は夜です。ということは人の活動もおおよそ二分されます。 ということは世界規模でサーバーを提供するGoogleは大雑把にいうと半分のインフラをもつことで全ユーザーにサービスを提供できます。

さらにGoogleドキュメントやAndroidなどを見るとわかるとおり、クライアント(PCやブラウザ、タブレットやスマホ)がデータ処理の多くを行なっています。 クラウドとはいうものの、作業(CPUやメモリ)はユーザー(クライアント)が個々に担当しているわけです。

Googleが主に提供するのはデータの保存とクライアント側でそのデータの加工・編集をおこなうプログラムの提供です。

仮にクライアントではなくクラウド側ですべての処理を行ったらどうなるでしょうか。結果は想像通りです。今のビジネスモデルでは不可能です。 (各ユーザーにPCと同じパワーを持つCPUやメモリをクラウド側で提供することは年間1200円では無理です)


■ Googleの素晴らしい点

彼らのサービスの何がいいのかを考えてみて下さい。例えば表計算で資料を作ったとします。 Googleドキュメントにデータを置く限り、PCでもスマホでも、タブレットであっても「同じ」データを参照、編集できます。

これは便利です。

仕組みはとてもシンプルでデータをクライアントにダウンロードし、クライアント内で動いているプログラムを使い編集後、クラウド上のデータを更新する、というものです。


■ Googleがやりたいもっと素晴らしいこと

ではGoogleの出来ないことは何でしょうか。

  • 大きなソフトウェアの提供
    例:デザインや大きなゲームなどCPUやメモリを大量に消費するもの
  • データだけではなくソフトウェア・プログラムを支配すること

それぞれを説明していきます。


■ Googleは大きなソフトウェア(機能)を提供出来ない

例えばデザインソフトのようなものをGoogleは提供できません。理由は彼らが想定しているCPUやメモリのキャパを超えるインフラが必要だからです。 現在のGoogleのサービスでは「プログラム(コード)」はローカル(ユーザーが使っているPCやタブレット)で動いています。

それも多くの場合ブラウザがクライアントソフトとなっています。

データをクラウドに置き、プログラムをローカルで動かす現在の方法の場合、現時点では限界があります。 ましてはタブレットで利用することは現在では不可能に近い話です。理由はクライアントの性能です。


■ ソフトウェア・プログラム

もしGoogleのサービスがすべてクラウドで動いているならば、Googleはデータだけでなくソフトウェア・プログラムを支配することになります。 次のような利用方法を想像してみて下さい。

  • Googleのクラウドは従来通りデータをすべてもつ
  • クラウドですべてのソフトウェア(アプリ)を動かす
    → 現在はローカルで動かしています
  • 各ユーザーはPCやスマホ、タブレットをモニタとして利用し、クラウド内で動作しているアプリを遠隔操作する

仮にこの世界をGoogleが構築できたなら、マイクロソフトもアップルも必要なくなります。 イメージとしては様々なソフトウェ(タブレットやブラウザでは実現出来ないソフトウェア)が動作するパソコンを各ユーザーにGoogleが提供し、 ユーザーはインターネット経由でそれらを遠隔操作する感じです。

この世界が実現したならば、ユーザーは確実に他のサービスが必要なくなります。マイクロソフトであろうが、アップルであろうが、リナックスであろうが、 画面に表示される「パソコン」はGoogleが提供するものになるからです。 Googleの完全支配の完成です。


■ そしてはじめの問題に戻って考える

現時点ではこの理想的な世界をGoogleは提供できません。

ユーザー一人あたりの予算が1200円だからです


■ この資料をどのように作っているか

私はこの資料を地下鉄で書いています。使っているのはChromebookというブラウザ以外何もない超軽量PCです。 ところが画面に映し出されているワープロは、会社に設置している小型サーバー内で動いているソフトです。 Chromebookでそのソフトが動いているわけではありません。

遠隔操作しているのです

メモリは16Gバイトあります。HDDは2Tで、それも二重化(RAID)しています。使えるソフトはデザインソフト、本格的な表計算など想像が出来るすべてです。 すべて事務所内のWaffle Cellで動作し、遠隔操作で利用しています。回線はスマホを経由したテザリングです。

なぜこれが可能か。

  • PC(Waffle Cell)をほぼ独占(実際には他の社員4名と共有)
  • 日本の回線インフラが素晴らしい

Googleが同じような機能を全ユーザーに提供できるとは現時点では思えません。どうでしょうか?


■ クラウドで実現しようとした(している)挑戦者達

クラウドでまるごとPCを提供しようとした挑戦者たちがいます(いました) ところが現時点では失敗に終わっています。

  • ユーザーの負担が大きい(例:月額60ドル)
  • インフラ負担に耐えられない
    ユーザーはどこにいてもすべてのデータは彼らのデータセンターに繋がる回線を利用します
    さらに各ユーザーにPCを1台ずつ用意する、というのが基本となります


■ 私達の答え

Waffle Cellです。