最近まで大手企業でしか利用出来なかった「プライベートクラウド」が10万円程度でも利用できるようになり、個人でも導入できるようになりました。プライベートクラウドがどのうようなものなのか、ご紹介します。
以下、プライベートクラウドで出来る主な機能と利用例を紹介します。
ファイルサーバーとはデータを収める記憶媒体を持ったサーバーコンピュータのことです。NAS(ネットワーク接続型記憶媒体)とも呼ばれ、LANでネットに接続することで「外付け」のHDDのように利用できます。 この機能には通常の内蔵ハードディスクドライブや外付けハードディスクドライブと違い以下の特徴があります。
ファイルサーバーは次のような使い方ができます。
VPNは「仮想専用線」と言う意味です。専用線を利用すると第三者が入り込めないので非常に安全に情報をやり取りできます。しかしコストが問題となります。そこでインターネット回線の中に仮想的な「専用線」をソフトウェア的に作り、データをその中を通して利用するのが「VPN=仮想専用線」です。安価なインターネット回線を利用するので低コストが実現できるのです。 VPNにはいくつかの種類があります。
何れの方式においてもVPN接続したPCやスマホ、タブレットは世界中どこにいても社内や自宅内にいるのと同じ状態になります。(専用回線で直接接続しているのと同じ状態)通信が高度に暗号化されているだけでなく、外部にいても社内、自宅内にいるのと同じ状態になります。
シンクライアントと仮想デスクトップという聞きなれない言葉はほぼ同義です。これは
手元のPCやタブレット、スマホをモニタ・ディスプレイとしてのみ利用する
というものです。
シンクライアントシステムには2つの要素が必要です。
シンクライアントの「シン」は英語でThin = 薄い、という意味です。シンクライアント側はモニタやキーボードなど、最小限の機能のみを利用し、サーバー側にはデータやアプリケーションソフトなどすべてを搭載します。
ネットにさえ接続できればシンクライアントはいつでもどこでも、PCやタブレットから「同じ」画面に接続でき、同じデータを見ることができます。当然同じアプリを利用できます。(同じ画面を見ているので当然です)
持ち運びが出来るモニタを実現するのがこのシンクライアント・仮想デスクトップ機能と言えます。
学校や塾の先生は生徒の成績など、個人情報を扱います。さらに授業で利用する資料を学校・塾だけでなく自宅で作成・編集することも多いでしょう。 そこでVPNやシンクライアント機能が役に立ちます。
従来、これらのデータは
ことが多かったでしょう。しかしプライベートクラウドサーバーとシンクライアント機能を利用すると使い方が一変します。
電車にPCを置き忘れても問題はありません。持ち運ぶのはモニタ機能だけだからです。さらにサーバー内のすべての資料にアクセスできます。データもアプリも「一元管理する」ことが可能となります。
ある会社での実例です。その会社では営業マンが現場に出向き、お客様から詳細を聞き見積を作成するという仕事をしています。しかし正式な見積書には社判が必要で、郵送することを求められます。 そこで
各地を回って営業をする彼にとっては、敏速に業務に対応できるようになりました。
大切な顧客の情報を持ち歩かなくてすむ点も重要な要素です。
税理士は顧客企業の情報を多く持っています。さらにそれらの情報を顧客とやり取りする必要があります。近年多くの場合それらのデータはデジタル化されています。
ある税理士の場合、これまでそのような情報をUSBメモリやメールでやり取りをしていました。さらに税務調査などがある場合には必要なデータをノートPCに「コピー」して顧問先企業へ出向く必要がありました。
しかしプライベートクラウドを利用することでこれらを一切行わず、完全にデータを扱えるようになりました。顧客企業先でも事務所にあるすべてのデータにアクセスできます。
多くの方たちがクラウド型のメールを使わない限り各PCやスマホ、タブレットにメールソフトを導入し、それぞれ送受信メールを各々保存していることでしょう。一方クラウド型を利用するとデータは一元管理され、いつでもどこでも送受信したメールにアクセスすることができます。
一方プライベートクラウドを利用するとその一歩先へ行くことができます。すなわち、送受信したメールのデータだけではなく、メールソフトそのものも一元管理できます。
プライベートクラウドサーバー内で「実際に動いている」ソフトをPCやタブレット経由で「見る」ことができるので、完全、完璧なメールの一元管理ができます。
GoogleのGメールではデータを一元管理し、それにアクセスするメールソフトは各PCやスマホ、タブレット内で動いています。場合によってはその閲覧ソフトとしてブラウザを利用します。一方シンクライアントではモニターを持ち歩くので、実体は常にサーバーの中にあります。この点が大きく異なります。
プライベートクラウドでメール機能を利用するとその便利さから、これら機能を手放せなくなることでしょう。
クラウドにデータを預けるとどのデバイスからでもアクセスできるのでUSBメモリが必要なくなります。しかしプライベートクラウドサーバーを持つとメール同様、それよりも一つ先の世界を経験できます。
プライベートクラウドサーバーと通常のクラウドの違いは
例えば表計算用のデータを複数のPCやタブレット、スマホで編集するとします。この場合
プライベートクラウドサーバーを導入しシンクライアントを利用しはじめたある会社の社長の実例です。東京都青梅市にあるその会社では毎週月曜日朝までにその週の生産計画を作ります。その計画には専用ソフトと社内にあるデータが利用されます。
プライベートクラウドサーバーを導入するまで、社長は必要に応じて週末に会社まで出向き、専用ソフトを利用して次週の生産計画を立てていました。しかし現在は自宅から会社のプライベートクラウドサーバーにアクセスし、すべての作業を自宅で行なっています。往復30km近くの移動が必要なくなりました。
社長の奥様は経理を担当していますが、主婦業も兼ねているので自宅から会社のプライベートクラウドにアクセスし、給与計算などをおこなうことが出来るようになりました。
ソフトウェア技術者にとって自分で持てるクラウドサーバーは夢のような存在です。
従来のクラウドはサービス提供者が完全にコントロールする世界です。しかしプライベートクラウドサーバーを自分でも持つ、ということは自らサービス提供者になることなのです。 そもそもパソコンの世界は管理者のコントーロールから解放され、自由な世界を創り上げるものでした。しかし近年その流れは真逆に進んできたと言えます。ソフトウェア開発者の創意工夫を生かし、新しい世界を築くことが可能な世界が「プライベートクラウド」とも言えるでしょう。